三機工業人に快適を。地球に最適を。

Vol.2

「南極観測」座談会

地球の将来予測につながる南極観測
快適な環境づくりと
共同研究で貢献

藤野博行 東海林貴 福森幹太

藤野博行
国立極地研究所 南極観測センター 設営業務担当マネージャー
東海林貴
第66次隊越冬隊員(三機工業から国立極地研究所へ出向)
福森幹太
三機工業 R&Dセンター 統括部長

(写真左から)
藤野博行 国立極地研究所 南極観測センター 設営業務担当マネージャー
東海林貴 第66次隊越冬隊員(三機工業から国立極地研究所へ出向)
福森幹太 三機工業 R&Dセンター 統括部長

総合エンジニアリング企業の三機工業は4月に創立100周年を迎えた。シリーズ企画「人に快適を。地球に最適を。」Vol.2は、「南極観測」座談会を実施。日本の南極地域観測を主導する国立極地研究所の藤野博行さん、三機工業から国立極地研究所へ出向し第66次越冬隊員として活動中の東海林貴さん、同社R&Dセンターで国立極地研究所等と連携して共同研究を行っている福森幹太さんの3人に、南極観測事業の意義、昭和基地での三機工業の取り組みなどを聞いた。

*座談会は、南極の昭和基地と国立極地研究所 南極・北極科学館(立川市)を衛星通信で結んで実施。

1991年から国立極地研究所に社員派遣
昭和基地で環境保全・建築設備担う

――日本の南極観測について教えてください。

日本の南極観測は、第1次南極地域観測隊が1957年に昭和基地を開設したところから始まります。以来70年近くにわたり観測を続け、様々な成果を上げてきました。1970年代の隕石の大量発見、1982年の世界初のオゾンホールの発見は代表例です。人間の活動がほぼ行われていない南極には、過去の気候変動や地殻変動など地球の変化の様子が自然の中に残されています。南極観測は、地球環境の変動メカニズムを解明し、将来予測に役立てるという大きな使命を担っているのです。

日本は、1961年に発効された南極に関する国際的な取り決め「南極条約」の最初の締約国12カ国のメンバーです。第2次世界大戦後の復興途上だった日本の状況を考えると、非常に誇らしい決断だったと思います。

南緯69度・東経39度の地点に接岸完了後、ただちに積荷が降ろされる「宗谷」 写真提供:国立極地研究所
南緯69度・東経39度の地点に接岸完了後、ただちに積荷が降ろされる「宗谷」 写真提供:国立極地研究所

――三機工業はなぜ南極観測事業に参加し、現地でどのような活動をしているのでしょう。

三機工業は今「人に快適を。地球に最適を。」というコーポレートメッセージを発信していますが、以前から会社全体にこうした意識は根付いており、南極観測事業への参加は、その一環です。始まりは、1957年第2次越冬隊に弊社のローラーコンベヤー30台を納品し、物資の搬入に活用されたことです。1991年には初の越冬隊員として国立極地研究所へ社員を派遣し、これまで21人が参加しています。環境保全業務として廃棄物の分別管理からスタートし、汚水処理設備の施工と維持管理を続けており、「南極を汚さない」取り組みを行ってきました。その後、基本観測棟の新設など建築設備工事にも関わるようになっています。

昭和基地で環境保全業務や建築設備工事などを担い、観測活動をサポート 写真提供:国立極地研究所
昭和基地で環境保全業務や建築設備工事などを担い、観測活動をサポート 写真提供:国立極地研究所

――東海林さんが南極観測隊に応募した動機と、現地での活動内容を教えてください。

東海林貴
東海林貴 
第66次隊越冬隊員(三機工業から国立極地研究所へ出向)

応募の動機は、新しいことに挑戦してみたいと思ったからです。以前から南極観測隊に興味はあったのですが、環境保全隊員として弊社では環境システム部門から参加するだけでした。そんな中2018年第60次隊以降、機械隊員として私が所属する建築設備部門からも参加できることになり、応募した次第です。機械隊員は、基地整備の維持や車両・機器類の整備などを担当する6人で構成されており、私は建物の空調・給水・消火設備など機械設備全般の維持管理を担っています。冬期は30人ほど、夏期は最大100人ほどが活動する昭和基地で、生活基盤を維持し快適な環境を整え、観測をサポートするのが主な仕事です。

東海林貴
東海林貴 第66次隊越冬隊員(三機工業から国立極地研究所へ出向)

エネルギーのゼロエミッションへ
収集データをクラウドで共有

――今回の第66次観測では、三機工業は国立極地研究所等と連携して共同研究も行っていますね。

福森幹太
福森幹太
 三機工業R&Dセンター 統括部長

環境面では、廃棄物の処理と国内排水基準を満たす汚水処理を行っていますが、昭和基地で利用するエネルギーの面でも環境に配慮した基地づくりに貢献したいと考えています。そこで、昭和基地のゼロエミッション達成に向けた、「クラウドBEMS(ビルエネルギー管理システム)」の研究を始めました。昭和基地にある50~60の建築物は順次、建て替え・更新の時期を迎えています。その際、エネルギー利用の最適化・省エネルギー化などを設計計画に反映することが重要です。今回の共同研究では、年間を通じた「電気の利用実態」「暖房や給湯など熱エネルギーの消費状況」を、南極側と日本側とでクラウドシステムで共有しながら、測定・調査・分析します。

福森幹太
福森幹太 三機工業R&Dセンター 統括部長

「IoTを活用し自動化 クラウドBEMSの構築」
「IoTを活用し自動化 クラウドBEMSの構築」

南極側では、データ収集のための計測機器を基地内の各所に設置し、計測を開始しました。これまでは、隊員が現地でデータを取り帰国後にリポートにまとめていましたが、時間がかかり、次の隊への引き継ぎも難しかった。今回の研究で、リアルタイムでデータが共有されるようになれば、データの活用が進むと思います。

藤野博行氏
藤野博行氏
国立極地研究所 南極観測センター 設営業務担当マネージャー

クリーンな基地の運営には、風力や太陽光など再生可能エネルギーの利用をさらに拡大する必要があります。今回の共同研究には大いに期待しています。南極にも地球温暖化の影響が及んでおり、昭和基地のある東南極ではそれほど顕著ではありませんが、各国の基地が集まる南極半島辺りでは氷床の融解といった影響が出ています。南極の氷床は陸上の氷の約90%を占めており、すべて融解すると海面を60メートルくらい上昇させる可能性があります。今後これらの融解をいかに抑制するかは大きな課題です。

藤野博行氏
藤野博行氏 国立極地研究所 南極観測センター 設営業務担当マネージャー

――南極観測事業での経験やノウハウは、三機工業の事業にどのように生かされますか。

例えば、マイナス30度以下にもなる環境下での汚水処理システムの運用、維持管理の知見は、日本国内外でも生かされます。南極では、トラブルが起きたときに業者さんを呼んで修理することができません。日々の点検・管理をはじめ様々なノウハウや技術は、南極と日本の双方で共有・蓄積しており、越冬隊員にフィードバックしています。

今回の共同研究で得たデータや知見を今後は、震災などで孤立した地域のBCP(事業継続計画)にも生かしていきたいと考えています。孤立したコミュニティーが最小限の機能を維持・継続するために必要な熱・エネルギーを考える際、昭和基地の規模は想定モデルとして活用できる。こうした視点でも、今回の共同研究で得たデータが生かせると考えています。

配管システムの実装試験をする東海林隊員
配管システムの実装試験をする東海林隊員

オーロラ鑑賞は南極での楽しみの一つ 写真提供:国立極地研究所
オーロラ鑑賞は南極での楽しみの一つ 写真提供:国立極地研究所

左/配管システムの実装試験をする東海林隊員 右/オーロラ鑑賞は南極での楽しみの一つ 写真提供:国立極地研究所

「南極観測パートナー企業」
地球を守る技術開発に貢献

――日経電子版読者へのメッセージをお願いします。

「南極観測パートナー企業のロゴマーク」
「南極観測パートナー企業のロゴマーク」

南極地域観測は国家事業ですが、民間事業者のサポートがないと成り立ちません。そこで、南極地域観測事業に顕著な貢献を継続している企業を「国立極地研究所 南極観測パートナー企業」として認定する制度を始めました。現在12の企業を認定しており、三機工業さんはその1社です。より多くの読者に、南極に興味を持っていただき、観測の重要性を理解いただき、企業の皆さんとのパートナーシップを拡大できればうれしいです。

「南極観測パートナー企業のロゴマーク」
「南極観測パートナー企業のロゴマーク」

私も20年ほど前、越冬隊員として南極観測に参加したのですが、三機工業さんは南極に社員を派遣するだけでなく、日本からのサポートも非常に充実していると実感しました。これまでの支援に感謝するとともに、これからも技術的支援含め、ご協力いただけることを期待しています。

スノーモービルを運転する東海林隊員 写真提供:国立極地研究所
スノーモービルを運転する東海林隊員 写真提供:国立極地研究所

7月の南極の外気温はマイナス15度から20度くらいですが、室温は20度くらい。南極に来て半年以上たちますが、食事もおいしく、お風呂にも入れる。通信環境も整っていて、日本にいた時とほとんど変わらずに生活できています。想像以上に快適に過ごせているのは、手前味噌ではありますが、総合エンジニアリング企業として三機工業が長年にわたり築いてきた技術やノウハウが生かされているからだと実感しています。ただし、給水の停止や機器の故障などはいつ起こるか分かりません。常に気を引き締めて、第66次越冬隊員として自分の仕事を全うします。応援よろしくお願いします。

スノーモービルを運転する東海林隊員 写真提供:国立極地研究所
スノーモービルを運転する東海林隊員 写真提供:国立極地研究所

私が所属するR&Dセンターは、弊社の事業領域に合わせた様々な研究開発を担っています。大学や国の研究機関と連携した調査・検証・研究開発も行っており、今回の南極での共同研究もその一つ。南極観測のサポートは、「人に快適を。地球に最適を。」を実現する上でも重要な活動です。南極観測パートナー企業として、私たちが住む地球を守るための技術開発に、これからも貢献していきたいと思います。ご期待ください。

座談会は南極と国立極地研究所の南極・北極科学館を通信衛星で結んでオンラインで実施。写真右の背景は実際に南極で使用された雪上車
座談会は南極と国立極地研究所の南極・北極科学館を通信衛星で結んでオンラインで実施。写真右の背景は実際に南極で使用された雪上車