――今回の第66次観測では、三機工業は国立極地研究所等と連携して共同研究も行っていますね。
環境面では、廃棄物の処理と国内排水基準を満たす汚水処理を行っていますが、昭和基地で利用するエネルギーの面でも環境に配慮した基地づくりに貢献したいと考えています。そこで、昭和基地のゼロエミッション達成に向けた、「クラウドBEMS(ビルエネルギー管理システム)」の研究を始めました。昭和基地にある50~60の建築物は順次、建て替え・更新の時期を迎えています。その際、エネルギー利用の最適化・省エネルギー化などを設計計画に反映することが重要です。今回の共同研究では、年間を通じた「電気の利用実態」「暖房や給湯など熱エネルギーの消費状況」を、南極側と日本側とでクラウドシステムで共有しながら、測定・調査・分析します。
南極側では、データ収集のための計測機器を基地内の各所に設置し、計測を開始しました。これまでは、隊員が現地でデータを取り帰国後にリポートにまとめていましたが、時間がかかり、次の隊への引き継ぎも難しかった。今回の研究で、リアルタイムでデータが共有されるようになれば、データの活用が進むと思います。
クリーンな基地の運営には、風力や太陽光など再生可能エネルギーの利用をさらに拡大する必要があります。今回の共同研究には大いに期待しています。南極にも地球温暖化の影響が及んでおり、昭和基地のある東南極ではそれほど顕著ではありませんが、各国の基地が集まる南極半島辺りでは氷床の融解といった影響が出ています。南極の氷床は陸上の氷の約90%を占めており、すべて融解すると海面を60メートルくらい上昇させる可能性があります。今後これらの融解をいかに抑制するかは大きな課題です。
――南極観測事業での経験やノウハウは、三機工業の事業にどのように生かされますか。
例えば、マイナス30度以下にもなる環境下での汚水処理システムの運用、維持管理の知見は、日本国内外でも生かされます。南極では、トラブルが起きたときに業者さんを呼んで修理することができません。日々の点検・管理をはじめ様々なノウハウや技術は、南極と日本の双方で共有・蓄積しており、越冬隊員にフィードバックしています。
今回の共同研究で得たデータや知見を今後は、震災などで孤立した地域のBCP(事業継続計画)にも生かしていきたいと考えています。孤立したコミュニティーが最小限の機能を維持・継続するために必要な熱・エネルギーを考える際、昭和基地の規模は想定モデルとして活用できる。こうした視点でも、今回の共同研究で得たデータが生かせると考えています。