
トップ対談
100年の歩みの中で
日本の産業発展に貢献
100年先も選ばれ続ける「三機」へ
石田博一 三機工業社長伊藤邦雄 一橋大学CFO教育研究センター長
石田博一 三機工業社長(写真左)
伊藤邦雄 一橋大学CFO教育研究センター長(写真右)

トップ対談
石田博一 三機工業社長伊藤邦雄 一橋大学CFO教育研究センター長
石田博一 三機工業社長(写真左)
伊藤邦雄 一橋大学CFO教育研究センター長(写真右)
総合エンジニアリング企業の三機工業は、経営理念に「エンジニアリングをつうじて 快適環境を創造し 広く社会の発展に貢献する」を掲げ、4月に創立100周年を迎えた。シリーズ企画「人に快適を。地球に最適を。」Vol.1では、一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄氏と三機工業の石田博一社長が対談。同社の100年の歩みと強み、未来ビジョン達成に向けた戦略とは――。
母体は旧三井物産の機械部
変革を生む変化対応力で成長
三機工業は、1923年の関東大震災からの復興という社会的要請もあり、1925年に旧三井物産の機械部を母体に、暖房・衛生設備の工事会社として誕生しました。以来、事業の幅を広げ、現在はオフィスビルや工場、病院、データセンターなどの空調・衛生・電気設備の設計・施工を手掛ける建築設備事業、FA(ファクトリーオートメーション)システムや上下水処理設備、廃棄物処理設備、製造プラントの設計・施工を手掛けるプラント設備事業などを展開しています。100年の歩みの中で、総合エンジニアリング企業として日本の産業の発展に貢献してきたと自負しています。
100周年記念のサイトを拝見しました。三井本館では日本初の全館冷房設備を手掛け、日本初の超高層ビル・霞が関ビルディングの空調・衛生・電気設備も三機工業が手掛けたんですね。
三信ビルディング(竣工当時)
三井本館(竣工当時)
1970年大阪万博の「動く歩道」
(写真左から)三信ビルディング(竣工当時)、三井本館(竣工当時)、1970年大阪万博の「動く歩道」
はい。1970年の大阪万博で話題になった「動く歩道」も弊社が手掛けたものです。日本の歴史的な出来事に様々な形で参画させていただき、都度、新しい技術やシステムを取り入れて、スパイラルアップ(らせん状の成長)を図りながら、事業の幅を広げてきました。例えば1930年に竣工し2007年に老朽化により解体された日比谷の三信ビルディングでは、オフィスのごみ問題が浮上したことを受け焼却施設を新たに設置。これが現在の廃棄物処理事業につながっています。国立代々木競技場は、1964年に東京で開催された世界的スポーツ大会の際には空調を、2021年の同大会開催前には空調・衛生・電気の耐震の改修工事を担当しました。
伊藤邦雄氏
一橋大学CFO教育研究センター長
なるほど。個々の技術を少しずつ改善、進化させながら、新しい時代を切り開くような案件の中で、花を咲かせてきた。つまり、急進的ではなく漸進的なエボリューション(進化・発展)が変革につながっているのですね。加えて、変革を生む変化対応力があったから成長を続け、100周年を迎えられたのだと思います。
伊藤邦雄氏 一橋大学CFO教育研究センター長
新中計のテーマは「深化と共創」
27年度までに売上高3000億円
5月に「中期経営計画2027」を発表しました。前中計の好業績を受け、1年前倒しでのスタートです。どのような点に注力しますか。
新中計は、経営ビジョン“MIRAI 2030”に向けた最初の3年で、飛躍の土台づくりという位置づけです。テーマは「深化と共創」。「深化」では、施工業務を前倒しで進める「フロントローディング」の対象範囲の拡大による最適化、LCE(ライフサイクルエンジニアリング)事業の推進などを含め、コア事業を深掘りしていきます。もちろん、カーボンニュートラルの実現に向け、環境負荷低減に貢献する技術やシステムも深掘りします。
「共創」は、これまで自前主義の傾向が強かったので、今後は戦略的アライアンスを進め事業を拡大していく取り組みです。建築設備事業関連の資本・業務提携をはじめ、ファシリティシステム事業や機械システム事業でM&A(合併&買収)を活用したソリューション開発などを進めます。こうした施策を遂行し、2027年度までに売上高3000億円、営業利益300億円、自己資本利益率(ROE)16%以上を目指します。
前中計の振り返りなどを見ると、企業としての成長と株主還元が両立しており投資家から高く評価されていると思います。最近は、人的資本経営に関心を持つ投資家も増えてきました。経営戦略や事業戦略を実現するには、人財戦略とのマッチングが欠かせません。どのような施策を取りますか。
石田博一
三機工業社長
人財戦略は「Communication! Challenge!! Change!!! 対話し、踏み出し、成長し続ける」を掲げて取り組んでいきます。特に私が大事に思っているのは、働き方改革をもう一歩進め、働きがいを高めてもらう仕組みをつくることと、チャレンジ精神を高めてもらうことです。「人材版伊藤レポート2.0」をヒントに、成長投資500億円には重点分野の一つとして人的資本投資を策定しました。教育制度も見直し、階層に合わせた研修などを充実させていこうと考えています。
石田博一 三機工業社長
企業価値向上のための指標の中に「DXコア人財100名創出」とあります。AI(人工知能)などデジタル技術は、どのように活用していきますか。
3Dの設計データシステムであるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やICT(情報通信技術)を最大限活用し、生産性向上と高品質施工の両立に取り組んでいます。iPadを活用し現場と本社がリアルタイムで情報交換したり、ロボット技術を開発・応用し、建築現場の省力化を図ったりしています。また、水処理・廃棄物処理プロセスのAIによる省人化も進めていきます。ただし、ベースにある技術力をしっかりと磨きつつ、事業の幅を広げる意味でも何か新しいものを取り入れていく気持ちも出していきたいですね。
IT・ICTツールを活用して業務の最適化・効率化を図る
今後、半導体産業をはじめ最先端の動きに対応するには、これまでのような緩やかな変革ではなく、場合によっては急進的な変革も必要になるでしょう。そのためにも社員の成長を促し、経営者と社員が一体となってチャレンジしていくことが重要です。楽しみにしています。
伝統と新技術を組み合わせ
顧客の課題解決策を追求
100年の歩みを拝見していると、「人に快適を。地球に最適を。」というコーポレートメッセージが実に腑(ふ)に落ちます。ところで「快適」って、感じられる方がいいのか、感じられない方がいいのか、どちらなんでしょう。
エンジニアとしては「快適」を実感したいですが、一般の人たちにとっては、感じない「快適」の方がいいでしょう。不快を感じない快適環境を提供することが、我々の仕事だと思います。いわば「天井裏の魔術師」ですね(笑)。
感じなくても快適であれば、またそこに行きたくなりますよね。一方で「縁の下の力持ち」のような仕事は、社員の皆さんが家族に自慢したり、就活生にアピールしたりするのはなかなか難しい。社員の皆さんに仕事のやりがいや自己成長をどのように感じ取ってもらえばいいのでしょう。
新入社員教育などでは必ず「お客さまに興味を持ってください」と話しています。我々の仕事で一番重要なのは、伝統的な部分と新しい部分を混ぜながら、お客さまに最適な課題解決策を追求していくことです。そのためには、お客さまに寄り添うことが大事。こうした意識は社員に根付いており、お客さまに寄り添い、ニーズに応えることが、一人ひとりのやりがいにつながっていると思っています。
確かに三機工業は、顧客の状況や要望を聞きながら、技術や経験に基づく歴史や伝統と新しい技術を組み合わせるバランスが素晴らしい。加えて、ぶれない軸がある。「人に快適を。地球に最適を。」という価値観に共鳴する社員一人ひとりの存在と成長が、選ばれ続ける会社につながっていくと思います。
「サンキ」は「サンキュー」
「天に謝し、地に謝し、人に謝す」
「三機」は、母体である旧三井物産機械部の名称から派生した社名だとお聞きしましたが、100周年の記念サイトで、「口をちょっと丸めて『サンキ』と発音すると『サンキュー』になる」というエピソードを知りました。
創立3年後に発行した広報誌「三機マンスリー」の創刊号に、その話を添えて、「天に謝し、地に謝し、人に謝す」という一文が載っています。当時から、人や地球への感謝の気持ちを意識していたようで、とても感慨深いですね。
100年の歴史をずっと大事にし続けてきた会社であることがよく分かります。これからも、トラディショナルとモダニズムを融合させながら、私たちに快適な、地球に最適な環境を届けてください。期待しています。
三機工業の最大の強みは、100年にわたり培ってきた総合エンジニアリング力です。2050年の超長期ビジョン「さまざまな社会課題に対して快適環境を創造するエンジニアリングで答えを出し、サステナブルな世界の実現に貢献する企業」を達成し、100年先も選ばれ続ける会社であるために、これからも感謝の気持ちを忘れず「人に快適を。地球に最適を。」の姿勢を貫いていきます。ご支援よろしくお願いします。